焼津市、藤枝市、静岡市等の静岡県中部の税理士、公認会計士|かたかわ会計
目次
はじめに
2017年3月17日「中小企業の会計に関する指針」が改正、公表されたました。下記に、当該指針の位置づけ、具体的な改定内容等について触れていきたいと思います。
中小企業の会計に関する指針とは?
中小企業の会計ルールとして 「中小企業の会計に関する指針」と「中小企業の会計に関する基本要領」があります。
今回改正された「中小企業の会計に関する指針」とは、大企業のための会計ルールとは異なり、中小企業の立場を考慮して、中小企業が計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示す指針であり、中小企業に適用が強制されるのではなく、適用が推奨される位置づけの指針となっています。
「中小企業の会計に関する指針」は会計専門家(公認会計士、税理士)が役員に入っている会計参与設置会社が拠ることが適当とされているように、一定の水準を保った会計処理を示したものであるのに対し、「中小企業の会計に関する基本要領」は前者に比べ簡便な会計処理をすることが適当と考えられる中小企業が利用することを想定して策定されたものであります。
また、これらの会計ルールを満たすことにより融資や信用保証料に関して一定のメリットが設けられています。
「中小企業の会計に関する指針」については、その適用状況を確認するために、日本税理士会連合会が作成した「中小企業の会計に関する指針の適用に関するチェックリスト」を活用した融資商品が金融機関の一部で取り扱われています。
「中小企業の会計に関する基本要領」についても全国信用保証協会連合会ないし日本税理士会連合会が作成した「中小企業の会計に関する基本要領の適用に関するチェックリスト」を活用することにより、僅かながら信用保証料が割引される制度が平成28年度までありましたが、平成29年4月より従前の全国一律の制度から、各信用保証協会の判断による信用保証料の割引制度へ変更されています。詳細はお住まいの地域の信用保証協会にお問い合わせください。
何が改定されたの?
前置きが長くなりましたが、本題に入りますと改正前の中小会計指針第89項に今後の検討事項とされていた「資産除去債務」の項目が削除され、改定後の中小会計指針第39項に「敷金」の項目が追加されています。
中小企業への調査で資産除去債務の影響を受ける企業が限られており、敷金の会計処理を明確にするニーズが高いことを受け、資産除去債務の考え方を全面的に導入するのではなく、賃貸借契約の原状回復義務について「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」9項を参考に当該39項が追加されました。
具体的には、下記のように規定されています。また、改正後の全文がご覧になりたい方は、こちらの「中小企業の会計に関する指針」をご参照ください。
敷金のうち返還されないことが明らかな部分
税法上の繰延資産として、賃貸借期間にわたって償却する
敷金のうち返還されないことが明らかではない部分
原状回復費用の負担金額が合理的に見積もれる場合は、当該金額を費用として計上する
参考資料
中小企業の会計に関する指針39項(敷金)
敷金は、取得原価で計上する。このうち、建物等の賃貸借契約において返還されないことが明示されている部分の金額については、税法固有の繰延資産に該当し、賃貸借期間にわたって償却する。 また、返還されないことが明示されていない部分の金額については、原状回復 義務の履行に伴い回収が見込まれない金額を合理的に見積ることができる場合 は、当該金額を減額し、費用に計上する。
資産除去債務に関する会計基準の適用指針9項(建物等賃借契約に関連して敷金を支出している場合)
建物等の賃借契約において、当該賃借建物等に係る有形固定資産(内部造作等)の除去などの原状回復が契約で要求されていることから、当該有形固定資産に関連する資産除去債務を計上しなければならない場合がある。この場合において、当該賃借契約に関連する敷金が資産計上されているときは、当該計上額に関連する部分について、当該資産除去債務の負債計上及びこれに対応する除去費用の資産計上に代えて、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法によることができる。